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東京高等裁判所 昭和49年(く)71号 決定

少年 T・I(昭三二・五・一〇生)

主文

原決定を取り消す。

本件を千葉家庭裁判所に差し戻す。

理由

本件抗告の趣意は、法定代理人T・K子が提出した抗告申立書のとおりであるから、これを引用する。

所論は、少年は、昭和四八年一二月一九日午後一時三〇分ころ千葉市○○町×丁目×番地先道路において、自動二輪車(千葉○××××号)を運転して○○○町方面より○○方面に向い進行中、前方の安全を確認して進行すべき業務上の注意義務を怠り、前方を同一方向に進行中の○田○二運転の普通貨物自動車が右折しようとしているのを直進するものと軽信して進行した過失により、同車に自車を追突させ、その結果自車に同乗中のAに対し加療一四日間を要する両前腕打撲等の傷害を負わせたとの非行事実により、昭和四九年三月一九日原裁判所で千葉保護観察所の保護観察に付するとの決定を受けたが、右非行当時右自動二輪車を運転していたのはAであつて、少年は同人の身替りとなつたものである、というのである。

そこで、記録を調査し、当審における事実取調の結果をも参酌して検討すると、前記自動二輪車が○田○二運転の普通貨物自動車に追突した当時右自動二輪車を運転していたのはAであつて、少年は右自動二輪車の後部座席に同乗していたこと、少年は、本件事故により負傷したものの、右事故直後Aより、同人が無免許で運転していたためその非行が発覚するのを恐れて身替り犯人となることの依頼を受け、これを承諾したことを認めることができ、これらの事実関係に徴すると、原決定には重大な事実誤認があることに帰するので、原決定は取消を免れない。論旨は理由がある。

そこで、少年法第三三条第二項、同規則第五〇条により原決定を取り消し、本件を千葉家庭裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 脇田忠 裁判官 西村法 福島登)

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